フィクションが好きな奴ちょっと来い
今年で41歳になる澄花は今どうしても逢いたい人が居る
学生時代同じゼミで知り合った奏
一学年上のバイオリン科の男子だった
父親が有名な指揮者で 母親もピアニスト
そんな環境で育った奏は
平凡なサラリーマンの家庭の子女だった澄花にとっては
手の届かない存在だった
奏とは付き合った訳ではない
入学以来憧れ 彼が近代音楽史研究ゼミに参加してると聞いて
自分もそこに入ったのだった
澄花はプロになろうと思ってたわけではない
ただ 小さい時からピアノを習い
恩師の勧めで 音大に入ったものの
いまひとつ 打ち込めずにいた
そんな澄花にとって奏は 心のよりどころだった
どこに居てもキラキラしていた奏
取り巻きの美女も多く
みんな良家のお嬢さんだったから
とてもかなわないと思っていた
今も 奏の笑顔を忘れない
誰にも優しくて紳士的で 理想の男性だった
奏が卒業してしまうと
澄花は大学がつまらなくなった
ピアノに向かう気も失せて
早々に教職課程だけとると
もう ほとんど学校には行かなくなった
そんな時 奏の事故の知らせを聞いた
首都圏の有名なオーケストラに採用された奏が
楽員たちと乗ったワゴン車で事故に合い片腕を失ったという
悲しいニュースだった
澄花は泣いた 泣いて泣いて
逢いたいと思った
けれど 逢うすべもなく
やがて 世間も 奏のことを忘れ去り
澄花は音楽に向き合う気力もなくなって ピアノの蓋を閉じた
あれから 20年経って
まったく別の道に進んだ澄花は結婚し 子供も儲けた
けれど 家庭に幸せを見つけることもできず
夫とはうまくゆかず 3年前に別れた
ひとり娘の麻里亜を引き取って
今の澄花は楽器店の店長を務めている
音楽の知識が役に立ち なんとか親子で食べていける
麻里亜ももう15歳になった
娘には特に楽器を習わせていないのに
最近になってドラムをやりたいと言い出した
反対する理由もなく
澄花は自分の店の音楽教室のドラムコースに麻里亜をいれてやった
「やっぱりねぇ あんたの子よね」
年老いた実家の母が言う
「ほんとはあんたに ピアノ続けて貰いたかったけどね」
澄花は返す言葉がない
自分は純粋に音楽が好きだったわけではない
憧れの奏に逢いたくて大学に通っていただけだ
かあさんごめん と心でわびた
そして今も奏のことは忘れていない
あの事故からどうしているのか
奏の父は数年前に病死している
母親はピアニストとして活躍しているが日本には居ないようだ
それくらいのことしかわからない
元の学友に訪ねても 誰も奏のことは知らない
夢を奪われた奏が その後どうなったのか
今 どうしているのか
出来れば 生きているうちに逢いたい もう一度だけ逢いたい
そんな想いがつのるばかりだった
麻里亜は学校が終わると すぐに澄花の店に来た
スタジオが空いていれば こっそり練習をさせてもらう
もし空いていなかっても 店で楽譜を眺めたり
商品の管理を手伝ったり していた
「店長 麻里亜さん よくやってくれるし助かりますよ」
古株の二郎くんが褒めてくれる
彼はバンドもやっているので 麻里亜を誘いたいらしい
「女の子のドラマーってインパクトあるんすよ」
澄花は微笑んで聞いていた
麻里亜は好きな道に進めばいい
やりたいことがあれば まっすぐに
自分はどうだったんだろう
特に才能もなく ただ ミーハーで奏を追っていただけ
今思うと恥ずかしい
そんな気持ちがあるゆえか
澄花はピアノを販売するときは一段と真剣になった
幼い子のキラキラした瞳
鍵盤に震えながら触れる手
演奏する喜びを感じて欲しい
そう思って良心的に対応していた
そのせいか 澄花の店が他の支店より
ピアノ部門の売り上げが大きかった
ある時 本部から 調律師の渡部がやってきた
春のピアノフェアの打ち合わせだったが
彼から意外な名前を聞かされた
「店長 Ⅿ音大卒でしたよね?」
「ええ・・・」
あまり思い出したくない単語。。。
「二浦奏さん知ってます?」
胸を矢で射抜かれた
澄花は自分がどんな顔をしているだろうと思った
すぐに返事ができなかった
奏 奏
「片腕でピアノで作曲してる方です」
知らなかった 奏が
「そのかた・・・作曲家なの?」
「ええ つい最近まで名前知られてなかったんですよね」
「なんでも昔はバイオリンだったとか」
「森アンヌって歌手いるでしょ あの人の曲書いてるんですよ」
渡部が一人で喋り続ける間 澄花は遠くを見ていた
キャンパスのひだまりのような奏の周り
あの端正な容姿
彼の弾く泣きのようなバイオリン
涙があふれて来た
「店長?」
渡部が覗き込む
「あ ごめんなさい 思い出しちゃって」
「やっぱりご存知だったんですね」
「僕ね 彼のところ調律に行ってるんですよ」
「え?」
「いろいろお話し聞いてね Ⅿ音大って聞いて店長のこと話したんですよ」
なんてこと!
「二浦さん 今度来てくださるっ
言ってもらえました」
「店長のこと覚えてましたよ」
覚えてましたよ・・・その言葉がリフレインのように響く
奏が わたしのことを・・・
わたしのことを 覚えてた
「ね 春のピアノフェア ゲストに呼びましょうよ」
後のことはもう耳に入らなかった
話し続ける渡部の横をすり抜けて
陳列してあるピアノに近づくと
澄花はいきなり弾き始めた
店の店員たちも客も驚いた
澄花は何十年ぶりかに 鍵盤をたたいた
毎日見ていても決して弾きはしなかったピアノ
ドラマチックな旋律が店内に響いた
スタジオから麻里亜が出てきてびっくりした顔をしていた
「ママ!」
渡部はあっけにとられていた
長いブランクがあると思えない素晴らしい演奏だった
指はちゃんと動いた
こんなことがあるなんて
澄花自身もそう思った
奏への思いがあふれだした
片腕を失ってもなお 楽器を変え 音楽を追及している奏
喜びと同時に 自分の不甲斐なさを恥じた
負けてはいられない
澄花はラストの一音までひとつとして間違わずに弾き終えた
一瞬の沈黙のあと 拍手が鳴り響いた
店員も客も渡部も そして麻里亜も
感動して拍手してくれている
忘れてきたものをみつけた
澄花はそう思った
奏に 堂々と逢うために なにをすればいいか
澄花は心の中でつぶやいた
そして初めてピアノを弾く楽しさと喜びを感じていた
☆これはフィクションです☆
義母がいないととても元気な娘です
でも明日帰ってくるんですよね(笑)
明日は忙しい
9時に義母をお迎えに行って精算も済ませ
10時には義父の訪看さんが入浴介助に来られます
義父は昨日から部屋を散らかしているので
今夜中に片づけなくては
もう散らかし方が半端ないです(笑)
昨日はCDが20枚ほどない って騒いでたし
夕方には古い腕時計出してきて分解するし
夜中は夜中で一睡もしないで散らけ わめくし
ボケ具合も半端じゃないです(笑)
こんな年寄りにはなりたくないね
惜しまれて泣かれるうちに死にたいね
100歳越えてもしゃんとして
社会の役に立つ方もいらっしゃるというのに
うちのふたりはほんとにもう あきれるばかり
自分たちが長生きなこと感謝もしないし
当たり前だと思っているし
それで 他人のボケてるのを見て笑う
最低だと思います
あーやだやだ(笑)
義両親の寝室 ベッド回り ゴミ捨て場になっています(笑)
☆
その発想はなかった! 新しいフィクション
フィクションで節約上手
でチラッと紹介した、この本を読了しました。
1,620円
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まず、サラッと読みやすい本です。
会話も多いし、引き込まれますね。
なんですかねー、小説だからフィクションなんだけど、
限りなくリアルというか、胸が痛くなる。
物語の中で、尊敬、差別、反省、自尊心、感謝、絶望、
希望など、あらゆる感情が湧きました。
今の私では、経験することのない社会であり環境。
あくまでも想像しかできない世界。
そこをここまでリアルに表現するんだなーと、素直に
驚きました。
自分の中の醜い感情にも驚きましたね。
経験した人しかわからない、ってホントだな。
本からいろんなものを受け取りましたが、大きいのは、
「自分の人生に言い訳しない」
「自分の人生から逃げない」
ってことかな?
読む人によって、受け取ることが違うと思います。
ぜひ、読んでみてくださいね!
フィクション 関連ツイート
PAPARAZZI~※この物語はフィクションです~
が好きすぎるなんだろ……最高⤴︎⤴︎