これからの矢先を、デザインする。

これからの矢先を、デザインする。

矢先 あなたと夢を、ごいっしょに。

もう、泣かないと決めたんだ。

慶昌君が亡くなり、変えられないと喚き嘆き、自己嫌悪に陥った時に感じたこと。
私は泣くと感情を抑える事が出来なくなる。

ウンスが泣いたのは、彼に無謀な行動をさせてしまった自分に責任を感じながら、彼が無事だったことに涙したと私は感じた。

そんな彼女の代わりに、私がいるなんて。

キ・チョルからウンスを守るために私が矢先に立つという、考えそのものが間違っていたというの?
だから、彼女とチェ・ヨンの仲は進展しないの?

どうしたらいいのか、じっくり思考を巡らせたかったのに、その時間すらくれない。

泣いていないというのに、彼は私の髪をかきあげ耳に掛けた。

今の顔、見られたくないんだけどな。

そう思うと、自然と顔を背ける形を取っていた。

目の端に白が迫ったので、何事かと肩をビクつかせ見遣ると、布を手にしたチェ・ヨンが私の目尻下の頬を拭っている。
ピリッと痛みが走った。

どうやら転んだ時に、頬を擦りむいたらしい。

傷の様子を見ながら、汚れを優しく拭ってくれる。

「…… もう二度と、無駄に命は懸けませぬ」

その台詞が聞けたのは嬉しいが、何を思ってこの場面で言ったのだろうか。

私は「うん」と頷くしか出来なかった。

チェ・ヨンが拭った布には、砂利や血が付着している。
血といえば、私の血には力があるのではというチャン侍医と彼の見解。

千音子の氷功の怪我が綺麗になくなったらしいし、もしかしたらという考えが過った。

彼の怪我も治せる?
しかし、彼の手も私の手も汚れている。

血を舐める?
なんて言ったら、絶対変な目で見られる変態確定だ。

「…… 試されたいのですか?」

私の視線を察して、彼は少し呆れを含ませた声色で尋ねてくる。
何で解っちゃうかな?

「でも、汚いから、」

「貴女の血は汚れておりませぬ」

そういう意味じゃない。

気休めだけど、自分の左手の甲を服に擦り付けて汚れを落とし、頬の傷の血を付けようとした。

だが、その手を止められ、

「………… お許しを、」

短く許可を請い、チェ・ヨンの顔が、唇が、近づいてくる。

あわわわわわわわ

彼は直接、傷口に唇を寄せて血を舐め取る気だ。
心拍数がやばい。

チェ・ヨンの舌先が傷に触れた。

「んっ」

痛くはないが「痛っ」と声が出ちゃうのと同じで、口をきゅっと結んでた為に出た「ん」。
決して色っぽい「ん」ではない。

舐め取ったのか舌は離れたが、まだ彼との距離は数センチ。
目を瞑っているので、彼がどんな表情で血を舐めたのか分からないが、頬に熱い息がかかった。

先程は遠慮がちに触れた舌だったが、今度は遠慮なく傷口を犯す。

『びゃあぁ!?』

痛みとか彼の舌のエロい動きとか、柔らかな唇の感触とか熱い吐息とか、情報量過多で変な声が出た。

猫が尻尾を踏まれた時に出す鳴き声のような声が出た私に反応したチェ・ヨンは、謝罪の言葉を残しすぐに離れる。

とても気不味い空気が流れたが、冷たかった右手に暖かさが戻り、青白かった色も通常の色味となっていた。

「わっ、見て見て、治ってる! 左手は?」

刀を握った左手の傷はそのままだった。

ガックリと肩を落とす。

微妙な能力である。
内功で出来た傷のみだなんて。

どこが違うの?

ドラマだとこの場面、急に朝になって急に皇宮へ飛ぶのだけど、やっぱりそうはならないよね。
バライティ番組でも、ジャンプして次の瞬間には違う場所へ到着。なんてのもあるけど。
編集されているだけで、実際は移動している。

だから、皇宮まで移動だ。

「貴方は怪我をしているんだから!」

「天仙の馬です。お乗りください」

という、誰が馬に乗るかお互い譲り合っていると、空が白んでくる。
夜明けであった。

完徹じゃないか。

眠気もピークを過ぎて、逆にハイになってくる。
脳内麻薬が分泌され、所謂ランナーズハイ状態。

「こうなったら、歩くぞ~!」

結局、徒歩で皇宮に向かうことになった。

歩きながら、気になっていた【手紙】を見せてもらう。

「単身で乗り込もうとする馬鹿。で、申し訳ございませぬ」

「…… そんな事まで伝えたのか、あの子達」

漢文だから読めないが、多少知っている漢字が並んでいる。
一応、書いてもらった時も、確認済みだ。

「これの何処に、自決要素が含まれていたの?」

「…… その文面に不可解な点はございませぬ。ただ、 …… 」

「ただ?」

続きを躊躇っていたので、つい尋ねてしまった。

「【今までありがとう】とも取れる文章と、直筆で名と思しきものが添えられていたので、師叔が、…… 余計な詮索をしたと思われます」

【感謝】はお願いしたけど、【今まで】は言ってない。
そしてマンボ兄さんの所為にしたな。

「こちらは、【ソラ】と書かれているのですか?」

代筆の文章の最後に自分で名前を書いた。
だって、誰からの手紙か分からなかったら怪しくてポイ捨てしちゃうじゃない。

「うん。私の国の名前で『そら』」

平仮名で『そら』と。
漢字でも良かったのだけど、文面を見たら漢字ばかりで堅苦しいから平仮名で書いた。

「国? 天界にも国があるのですか?」

この世界の未来と言っても理解し難いだろう。

「国はたくさんあるし、医仙とも国が違います。それに、今喋っている言語とは違う言語を扱っています。慣れないので、言葉使いが安定しないのはその所為です」

尊敬語だったり、素だったりするのはその所為、ってことにする。
日本人は年上には必ず尊敬語、というわけではないからね。
親しくなると、ついつい砕けた喋りになってしまう。

「医仙のように、自由に喋っていただいても良いかと」

「無理」

その方がラクだけど、油断して境界線を越えそうで、自分なりに一種の線を引いている。
この世界と私の世界は違う。

「貴方だって怒鳴った時、畏まった喋りじゃなかったので、そちらでも良いかと」

「無理です」

「即答かい」

お互い同時にクスリと笑った。

悩んでないで矢先の激安をチェック

もう、泣かないと決めたんだ。

慶昌君が亡くなり、変えられないと喚き嘆き、自己嫌悪に陥った時に感じたこと。
私は泣くと感情を抑える事が出来なくなる。

ウンスが泣いたのは、彼に無謀な行動をさせてしまった自分に責任を感じながら、彼が無事だったことに涙したと私は感じた。

そんな彼女の代わりに、私がいるなんて。

キ・チョルからウンスを守るために私が矢先に立つという、考えそのものが間違っていたというの?
だから、彼女とチェ・ヨンの仲は進展しないの?

どうしたらいいのか、じっくり思考を巡らせたかったのに、その時間すらくれない。

泣いていないというのに、彼は私の髪をかきあげ耳に掛けた。

今の顔、見られたくないんだけどな。

そう思うと、自然と顔を背ける形を取っていた。

目の端に白が迫ったので、何事かと肩をビクつかせ見遣ると、布を手にしたチェ・ヨンが私の目尻下の頬を拭っている。
ピリッと痛みが走った。

どうやら転んだ時に、頬を擦りむいたらしい。

傷の様子を見ながら、汚れを優しく拭ってくれる。

「…… もう二度と、無駄に命は懸けませぬ」

その台詞が聞けたのは嬉しいが、何を思ってこの場面で言ったのだろうか。

私は「うん」と頷くしか出来なかった。

チェ・ヨンが拭った布には、砂利や血が付着している。
血といえば、私の血には力があるのではというチャン侍医と彼の見解。

千音子の氷功の怪我が綺麗になくなったらしいし、もしかしたらという考えが過った。

彼の怪我も治せる?
しかし、彼の手も私の手も汚れている。

血を舐める?
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「…… 試されたいのですか?」

私の視線を察して、彼は少し呆れを含ませた声色で尋ねてくる。
何で解っちゃうかな?

「でも、汚いから、」

「貴女の血は汚れておりませぬ」

そういう意味じゃない。

気休めだけど、自分の左手の甲を服に擦り付けて汚れを落とし、頬の傷の血を付けようとした。

だが、その手を止められ、

「………… お許しを、」

短く許可を請い、チェ・ヨンの顔が、唇が、近づいてくる。

あわわわわわわわ

彼は直接、傷口に唇を寄せて血を舐め取る気だ。
心拍数がやばい。

チェ・ヨンの舌先が傷に触れた。

「んっ」

痛くはないが「痛っ」と声が出ちゃうのと同じで、口をきゅっと結んでた為に出た「ん」。
決して色っぽい「ん」ではない。

舐め取ったのか舌は離れたが、まだ彼との距離は数センチ。
目を瞑っているので、彼がどんな表情で血を舐めたのか分からないが、頬に熱い息がかかった。

先程は遠慮がちに触れた舌だったが、今度は遠慮なく傷口を犯す。

『びゃあぁ!?』

痛みとか彼の舌のエロい動きとか、柔らかな唇の感触とか熱い吐息とか、情報量過多で変な声が出た。

猫が尻尾を踏まれた時に出す鳴き声のような声が出た私に反応したチェ・ヨンは、謝罪の言葉を残しすぐに離れる。

とても気不味い空気が流れたが、冷たかった右手に暖かさが戻り、青白かった色も通常の色味となっていた。

「わっ、見て見て、治ってる! 左手は?」

刀を握った左手の傷はそのままだった。

ガックリと肩を落とす。

微妙な能力である。
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結局、徒歩で皇宮に向かうことになった。

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漢文だから読めないが、多少知っている漢字が並んでいる。
一応、書いてもらった時も、確認済みだ。

「これの何処に、自決要素が含まれていたの?」

「…… その文面に不可解な点はございませぬ。ただ、 …… 」

「ただ?」

続きを躊躇っていたので、つい尋ねてしまった。

「【今までありがとう】とも取れる文章と、直筆で名と思しきものが添えられていたので、師叔が、…… 余計な詮索をしたと思われます」

【感謝】はお願いしたけど、【今まで】は言ってない。
そしてマンボ兄さんの所為にしたな。

「こちらは、【ソラ】と書かれているのですか?」

代筆の文章の最後に自分で名前を書いた。
だって、誰からの手紙か分からなかったら怪しくてポイ捨てしちゃうじゃない。

「うん。私の国の名前で『そら』」

平仮名で『そら』と。
漢字でも良かったのだけど、文面を見たら漢字ばかりで堅苦しいから平仮名で書いた。

「国? 天界にも国があるのですか?」

この世界の未来と言っても理解し難いだろう。

「国はたくさんあるし、医仙とも国が違います。それに、今喋っている言語とは違う言語を扱っています。慣れないので、言葉使いが安定しないのはその所為です」

尊敬語だったり、素だったりするのはその所為、ってことにする。
日本人は年上には必ず尊敬語、というわけではないからね。
親しくなると、ついつい砕けた喋りになってしまう。

「医仙のように、自由に喋っていただいても良いかと」

「無理」

その方がラクだけど、油断して境界線を越えそうで、自分なりに一種の線を引いている。
この世界と私の世界は違う。

「貴方だって怒鳴った時、畏まった喋りじゃなかったので、そちらでも良いかと」

「無理です」

「即答かい」

お互い同時にクスリと笑った。


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