「人間関係がうまくいかない…」と思ったときに試してみたい5つのzzz
于達赤三十五名が年跨ぎの警邏を終え、兵舎に戻った。
二日の間、皆一睡もしていない。
夜が明ければすぐに朝練だ。
少しでも寝ておこうと横になる者達から離れ、トクマンは鉄瓶を手に中身を口にする。
喉がカラカラだったのだ。
すっごい緊張したぁ〜
くちびる、割れちゃったかな
俺、乾燥に弱いから…
憧れるよなぁ、テジャンのツヤツヤのテカテカ…
☆
トクマンが湯飲みを手に顔をしかめている。
新兵を隊に迎えてからしばらく、目を輝かせながらブイブイと先輩風を吹かしていた若い于達赤が、ここ数日どこか上の空だ。
張りきりすぎて疲れが出たのか?
ソルラルが終われば、元との緊迫した情勢に拍車がかかる。
早々に戦が始まる可能性も大いにある。
そうなれば、トルベとトクマンのふたりが先鋒を率いることに。
槍使いは戦い方を知っているが、剣使いの方はチュソクの穴を埋めるには実戦が足りな過ぎる。
チュンソクは、この若い于達赤が心配で仕方なかった。
「どうしたトクマニ、おまえ寝ないのか? 明日が辛いぞ。
おっ白湯か、俺にもくれ」
「はいプジャン! 去年よりずっと空気がピリピリしてて、喉が渇いてしまって…あの」
湯飲みを差し出しながら、すがりつくような目を向けてくる。
「なんだ、言ってみろ! 俺でわかることならいくらでも答えてやる」
于達赤プジャンはそういって胸を張ったが…
「武士たるもの褥では、利き腕とは反対側に女人を置くって…どういうことなんでしょう?」
含んだばかりの液体を、ブブッと吹き出してしまった。
「しと、褥っておまえ…」
よもやまさか、よりにもよってトクマンの口から ”褥” という言葉が出てくるとは…
チュンソクは顎が落ちるほど驚いて、湯飲みの中身をゴクゴクと飲む。
おおい! これ、焼酎じゃないか
「プジャンならぁ、おわかりかと…」
「そ、そりゃあ…よくいうだろうが。利き手は攻撃の腕、もう一方は防御の腕だ」
「…それぇ、剣術の基本ですから」
上目遣いで乾いた唇を尖らせる。
「なぜぇ褥では、ヒック…利き手とは反対なのか、全然、わかりましぇんっ」
旨くまわらない呂律がもどかしいのか、しきりと唇に触れながらくだを巻く。
「トクマニ、今日のところはもう休め」
「俺え、右利きすっ!」
長い左腕をチュンソクの首に伸ばすと…
「プジャンはぁ、于達赤にとってぇ大切な人だから、左側でふ…(-_-)゚zzz…」
まったく、子供みたいな奴だな
此奴が于達赤になって、もう八年も経つのか…ひどく唇が荒れてたが
気になってトクマンの方を向くと…
…んんん、動かんぞ
右腕が身体の下敷きになっているのだから、動かないもの至極当然。無理矢理右腕を引き抜いても、まるで女子のように腕を縮めることしか出来ない有様。
利き腕とは反対側に女人を置くって…
トルベだな…
まったくいらぬことを吹き込みおって
しかし、当たってるよ
男のこっち側ってのは、いろいろと差し障りがある…多分…だが
☆☆☆
翌朝のこと、医仙さまからの贈り物を真ん中に置き、于達赤たちが賑わいを見せている。
「これを唇に?」
「トクマン、ビッキビキだったろ?」
「ああ、ぱっくり割れてしゃべるのも辛そうだったよな」
「見るに見かねてプジャンがテジャンに相談されたんだよな」
「俺、それ傍で聞いてた」
「テマン、相変わらず旨いところ持ってくなー。で? テジャンはなんて言った?」
「医仙さまが作った、薬があるって。目、少し泳いでた」
「その結果が、いい匂いのするこれになってったわけか…」
唇に直に塗る薬は、少し大きめの器から匙を使って各自が取り分けるシステム。
まずはトルベだ。持参した小さな容器に中身を詰められるだけ詰め、試しに塗ってみる。
「どうだ?」
「おっ! なんだかスーッとして…潤ってきたぜ」
「ようし、俺も!」「ちゃんと人数割りしてくれよ」「わかってる、任せろ!」
☆
同じものが武女子達にも届けられたという。
美しい入れ物に小分けにされた二つは、王妃とチェ尚宮用である。
直接手渡したい、というウンスの切なる願いを聞き入れ、チェ・ヨン自らが護衛につくことに。
「すっかり唇が潤うた。医仙、これは何というものじゃ?」
「リップバームって呼んでます。リップは唇のことで、バームはこっちで言うところの軟膏かしら。気に入っていただけてよかった。ワンビママ、実はですね…ゴニョゴニョゴニョ」
その内緒話に、王妃の青白い頬がサーッと朱に染まり、まあ、と目を丸くする。
「医仙、それを妾がか?」
「はい。ワンビママにしかできないことですもの」
「あいわかった。それこそが其方の媚薬なのじゃな」
王妃は、于達赤テジャンの口元をチラリと見やって、何事かを含んだように笑みを浮かべた。
☆☆☆
”テジャンの唇、やはりあれは医仙さまの媚薬らしい”
まことしやかな噂が宮中を駆け巡ったのは、その日の夕刻のこと。
確かに軟膏はよく効いた。瀕死状態だったトクマンの唇も回復中である。
だが…
「テジャンと比べちまうと、どっか違うよな」
「確かに、ああまでつやつやぷるぷるにはならないもんな」
「なあ、量
が足りぬとか?」
「あるいは、塗り方が異なるとか?」
それそれ、それだよ、とトルベはほくそ笑む。
医仙さまは、ご自分の唇から軟膏を移して差し上げてるんだ
テジャンだけが受けられる、塗っただけでは到底得られない、それはまさしく医仙さまの媚薬。
☆☆☆
その夜、坤成殿では…
「ほう、これが医仙の」
「はい、天界ではリップバームと言うそうで、唇によく馴染みます」
「そうか…しかし、余には届いておらぬぞ 」
「チョナ、チョナの唇は…妾がこうしてお守りいたします」
このリップバームは唇を温めてから塗るとさらに効果が高まるんです
ですからワンビママ、これを塗って、朝と夜、イングムニムにしっかりと口づけてください
終わり
*工作順利:ひたすら剣が上手くなりますように
*人和年豊:平和で豊かな実りの年を願って
東成西就:あちこちでラバーズ成就を
*瑞祥新春:新しき春を愛で喜びを共に
永寿嘉福:永く続くよき幸いをことほぐ
さてさて、新春はんこシリーズ(?)第二弾、はたしてどれが誰でしょう?
*の部分をお直ししました ❤︎
ウダルチーズ×三名と彼のカップルひと組です
そうだ!一回目のチェ・ヨンのところお直ししなくちゃ 💦
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