鳴かぬなら鳴かせてみせようプラベ

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プラベを語れる上司より、スポーツを語れる上司の方が、取引先に食い込んでいる。

S side

最近のスタッフはコンサートでの反応が良かったせいもあり、相葉くんとニノをやたらとくっつけた。

二人は総武線仲間っていうのもあるけど、プラベでも気楽に接してる仲だからか、その気負いなく普通に流れる空気感が人気だったりする。

モニターにやたらと映るツーショット。
でも、俺も負けてないからね。

ニノが足を組めば同じ方向に組み。
体の向きも同じにしたり
笑うところでは一緒に体を仰け反らせて笑った。

無意識の意識へ刷り込ませる。
俺とニノとの同一感。

できるなら
無理やりじゃなくてさ
本当は優しく受け止めたい。

でも、ニノが俺へと心を向けることは
多分、もう、ないかもな。

2本目の収録も終わり、楽屋へと帰る廊下。目の前では潤がニノの肩に腕を回して凭(もた)れてた。

アイツ、また…。

無意識なのか
意識してなのかは知らないが
なんでこうもまたニノにだけは近いのか。

前も収録を利用して
散々ニノのこと触りまくってたし
距離感バカになってたし。

あれを見てた時の俺の表情筋は

ピクピクしてたし。
できるなら
俺がその役をやりたかったかな。

「…でさ、そこの個室がさ、またいいんだよ寒くなくて。」
「ふふふっ。潤くんの気にするポイントそこだもんね。」

聞こえてくる潤とニノの会話に
ついつい耳をそばだてる。
「だって重要じゃん。体温奪われたら頭回んなくなるから。あ、いいのか、どうせ動いて暑くなんだし。」
「え。そんなに動く?酒飲むだけでしょ、そこで。」
「まあね。酒飲むだけだったら暑くはなんないんだけど…」

この話の展開はヤバい。

『個室』って単語がどうも引っかかる。
そこで酒飲みながら動いて汗かくとか
お前、もしかして、あそこにニノを連れていく気じゃないよな。
その時、少し後ろを歩く俺へと
潤が軽く目配せをした。
『翔さんもどう?』
その口元が
あまりにも色っぽく動くので
すぐにわかった。
潤が、確実にニノを落としに来ている。

「潤っ、ニノは今夜俺と飲む約束してるから。」

とっさに前に出てニノの横へと並んだ。

聞こえてくる会話が
もう俺の中での限界を達してた。

なあ、潤
頼むからニノには手を出さないでくれよ。

「へー。そうなんだ。ニノは一言も言ってなかったけどね、そんなこと。」

俺の目の前で動く潤の指。
ニノの左肩に回されたその指に
少しだけ力が入ったのがわかった。

俺に、ニノを取られたくねーってこと?

少しだけ赤く縁取られたニノの耳。
切なく細められた目が、また、俺から視線を外した。

………ああ

…そうだよな。

この状況は、どう考えても俺が邪魔者なわけで。潤の元へ行かせたくないのは俺だけど、ニノは、…ニノには今の状況は、心が震えるほど嬉しいはずなんだから。

ニノ…

なあ、俺のことも見ろよ。

見てくれよ。

ふっ と上げられたニノの顔。
次の言葉を発せない俺を不思議そうに見てから、少しだけ、…悲しそうに微笑んだ。

………そうだよな。

まあ、…そんなもんだよ。

どんなにニノの体を無理矢理開かせたところで、気持ちだけは動かせない。

さっきの擬似だけですでに彼氏面の俺は
なんと滑稽なんだろう。

結局ニノは俺に辱めを受けながらも
潤とこうなる事を願ってたってことだ。

これが
自然の成り行きなのか。

「…まあ、無理にとは言ってなかったし。ニノも潤と飲みたかったらそこへ…、行ってみたらいいよ。」

柔らかくニノを見つめた。

一瞬目が合うと、キョロキョロと視線を泳がし、俯いてしまう。

俺から逃げるなら今だよ

ニノ…

見つめる先に見えたのは
きゅきゅっと上がるニノの口角。
柔らかく細められた愛しい瞳。

俺の方へ、スっと上げられたニノの
穏やかな微笑み。

胸がきゅっと掴まれる。

やっぱさ、すんげー可愛い。
ニノにこんな目で見つめらたのは
すげー久しぶりかも…

楽屋でどんなに キ スしても
体に触れても得られなかった
俺の大好きな微笑み。

潤が隣りにいるからそうなのか?
なあ、ニノ…

潤と飲みに行くとか
言うなよ。

ホントは誰にも渡したくねーし
行かないでくれ。

やっぱり今日は俺と…

「じゃあ…、オレ、今日は潤くんと飲みに行くわ。ごめんね翔さん。」

「…ンぁ、ああ。」

ニノの笑顔が静かに
俺の横を通り過ぎて行った。

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